発酵食品について発信するコミュニティ拠点「三木町発酵ビルヂング」が和歌山市に誕生しました。5月に甘酒スタンド、6月に発酵素材を取り入れたサンドイッチ店、そして7月にはみそ汁メーンの定食店と、1つのビルに3つの店が次々とオープン。オーナーの秋山理絵さん(47)に思いを聞きました。

体に優しい食材

──なぜ発酵食を?

 「2年前の夏、高校3年だった息子がクローン病と診断されました。原因の分からない炎症や潰瘍(かいよう)が腸にできる難病です。隔月で点滴を受け、腸への負担を減らすため、食事は脂質を控えなければなりません。ファストフードを食べさせたこともなく、『食事には気を配ってきたのに、なぜ?』と苦しみましたが、息子のためにできることを考えました。そして、だめなものを避けるより、腸に良い物を毎日の食事に取り入れようと発想を転換。腸内環境を整える発酵食品に行き着きました」

──ビル1棟とは思い切りましたね。

 「10~20代にクローン病が増えているそうです。息子はじめ、病気で食事に気を使わなければならない人が、『ここへ行けば体に良いものが食べられる』『情報を得られる』場所がほしいと思うように。独学で調べるうち、発酵食品を味わい、学び、体験する施設が近年、各地にできていると知り、県内にも交流拠点をつくることにしました。サンドイッチ店を7年間営んだ経験を生かし、発酵食材を取り入れた料理や飲み物を出す3店舗を相次いでオープン。私も店内で調理しています」

全国の情報紹介

──どんな店が?

甘酒とセットで

 「1階は2店舗。一つはテイクアウトできる甘酒スタンド『アマゴト』です。生の甘酒にフルーツや野菜をブレンドした7種類の味があり、日替わりで飲んでも飽きません。サンドイッチ店『SANDO』は、自家製の発酵マヨネーズやヨーグルトソース、玉ねぎ麹(こうじ)といった調味料が特徴。具材は国産ヘレ肉や那智勝浦のマグロを塩麹に一晩漬け込んだもの、しょう油麹でひき肉を味付けしたコロッケなどをはさみます。油で揚げない調理も選べます。2階にはおみそ汁が主役の定食店『jill(ジル)』。8月は新潟、9月は和歌山と全国各地のみそや発酵食を月替わりで味わえます。シメに、削りたての鹿児島産鰹(かつお)節を加える『追い鰹汁飯』がおすすめです」

──今後は?

 「『気軽に飲んだり食べたりしたものが体に良いものだった』という風にしたいです。ビル開設に先立ち、『発酵キャラバン』と名付けたキッチンカーで5月上旬に新潟へ行き、甘酒を提供。その際に学んだ現地の発酵食や文化を、メニューに反映しています。今後も全国を回ってその土地の食材や情報を和歌山に集め、おいしく紹介します。鰹節削りや甘酒作りワークショップを開き、発酵を体験し、知識を交換できる場を目指します」

                     ◇   ◇

午前11時~午後6時(jillは5時)。同店(073・488・8088)。

詳細は「SANDO」インスタグラム

(ニュース和歌山/2022年8月20日更新)