〝不屈の魂 ジャズヴォーカリスト〟を自称する和歌山市のさつきさん(56)。脳出血からの言語障害、そして2度の急性骨髄性白血病と度々、病魔に襲われながらも、歌への情熱は衰えを知りません。9月24日㊏には3度目となる復帰ライブのステージに上がります。

愛娘のために

──3度の大病を経験されました。

 「2008年に脳出血で倒れました。命は助かったものの、右手と右足にマヒが残り、言語障害から歌手の命である声を奪われました。必死のリハビリを経て、何とか歌えるようになり、ライブを再開しましたが、16年、今度は急性骨髄性白血病に…。抗がん剤治療を乗り越え、再び復帰し、その経験をニュース和歌山さんで連載させてもらいましたね」

──18年秋から半年間でした。最終回では「みなさん、再発しないように祈っていてくださいね」と書かれましたが…。

 「連載終了から2ヵ月後の19年5月、2度目の白血病が分かりました。『なんでまた私が…』と思いましたが、すぐに『(当時中1だった)娘のために生きないとダメだ』と前を向きました」

──強いですね。

 「その年の9月、骨髄移植を受け、無事に成功。しかし、1ヵ月後、自宅療養になってから副作用に悩まされました。ひどい頭痛、体中のかゆみ、おなかが全くすかず、何も食べられない…。やせ細り、腕が棒のようになりました。抗がん剤治療よりつらかったです」

 

楽しみと不安と

──歌手活動したいとの気持ちは?

 「復帰への思いはあったものの、しゃべるのもしんどい期間が1年ほど続きました。コロナ禍も重なり、なかなか活動再開とはなりませんでした。そんな中、ファンから『そろそろライブは?』と聞かれることが増え、このままだと忘れられてしまう(笑)と思い、今年6月に決断しました」

──今回はどんな曲を?

 「これまではバンドをバックに歌うことが多かったですが、今回はギターの野江直樹さんと2人だけ。ジャズの『マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ』や映画音楽から『ムーン・リバー』、日本の曲からもジャズ調にアレンジした『遠くへ行きたい』『この道』など、しっとりお聴かせします」

──苦しい時を経て、3年ぶりのステージです。

 「高1になった娘が手伝いに来てくれるそうで、うれしいです。復帰ライブも3度目となると落ち着いていますよ…と言いながらも、正直、緊張はあります。全部が楽しみだけど、全部が不安といった心境です。でも、生きていく上で楽しさと不安はみんなあると思う。歌声を通してその両方を感じてほしい。この2年半、皆さん、コロナに苦しみましたが、なぐられっぱなしでは悔しいじゃないですか? こんな体で歌っている私の姿を見て、何かに挑戦したいと思ってもらいたいですね」

 

さつき×野江直樹デュオライブ

 9月24日午後7時、和歌山市太田のテイクファイブ。2500円、当日3000円。申し込みは同店(073・472・2636)。さつきさんの過去のニュース和歌山連載「からだは不自由。こころは自由。」。

(ニュース和歌山/2022年9月3日更新)