これまで市場に出回らなかった海産物を売り出す動きが活発になっている。和歌山市と海南市6漁協などでつくる和海地区広域水産業再生委員会は、魚種は豊富だが、市場に卸すほどの量は獲れない紀伊水道の魚介類を〝和海(わかい)もん〟のブランドで1月から販売。紀州日高漁協戸津井支所(由良町)はこれまで食べる習慣のなかった海藻あかもくに注目し、美容や健康に期待される成分の多さをアピールする。

和歌山・海南 近海魚 共通ブランド化

 〝さかな好きが、よろこぶ〟と書かれたポスターが掛かる産直市場よってって岩出店(岩出市中島)の海産物コーナー。新鮮なマアジやイサキ、赤舌平目などのパックには青い「和海もん」のシールがはられている。岩原美儀(みつぎ)店長は「料理方法を聞かれることも多く、近海で獲れた魚へのニーズの大きさを感じる。取り扱いを始めた1月に比べ、売上は半年で5割増しです」。近くの売り場に並ぶ紀州あかもくも「特徴であるネバネバ感で、夏場は特に人気ですね」。

 「和海もん」は和歌山市、海南市の6漁協の共通ブランド。この地域は小型底引き網や一本釣りが漁法の主流で、同じ種類の魚介類が、市場に安定して出荷できるだけの量を獲れないことも少なくない。これらを〝和海もん〟として、今年1月からよってって岩出店と貴志川店で取り扱う。

 ほぼ毎日届ける和歌浦漁協の岸真樹さんは「『新鮮でおいしいので、魚嫌いだった子どもが食べるようになった』とか、料理人が仕入れに来ていると聞いた時はうれしかった。今の季節は刺身でも煮てもおいしいアコウがおすすめ」とにっこり。

由良 海藻あかもく 特産化目指す

 一方、あかもくは由良町で収穫される海藻だが、「この辺りだけでなく、和歌山県内に食べる文化がなかった」と紀州日高漁協戸津井支所の筆頭理事、中村和孝さん。それどころか、船のスクリューに絡まるため、邪魔物扱いされてきた。5年前、県水産試験場職員に食べられると聞き、神奈川県の漁協を視察。収穫を始めた2016年は0・6㌧、昨年が1・8㌧、そして今年は4・8㌧と順調に伸ばす。よってって岩出店と貴志川店などのほか、今年から松源全店でも販売される。

 味はほとんどないが、シャキシャキとした食感が独特。注目はネバネバ成分に含まれる食物繊維の一種フコイダンで、整腸作用や美容作用が期待される。

 七曲市場の宅配弁当店、銀しゃり屋まるいちは昨年から、あかもく入りの丼、うどん、カレーの3種類を取り扱う。大畑勇人代表は「毎日10〜15食、安定して注文があります。健康への意識が高い女性に人気ですね」。

 戸津井支所では養殖も検討中。中村さんは「ひじき、わかめに続く3つ目の海藻として、由良の新たな特産品に育てたい。収穫する漁師だけでなく、加工する人も雇えるなど、地域活性化につながるはず」と意気込む。

 県内の漁業者は減少を続ける。1985年は7220人だったが、2013年は2907人に。県水産振興課は「漁業者が減る中、所得増が期待されるこうした取り組みを県としても支援していきたい」と話す。

 これまで日の目を見なかった水産物が漁業の未来を救うか。今後が注目される。

写真=〝和海もん〟の新鮮な魚が並ぶ(よってって岩出店)

(ニュース和歌山/2018年7月14日更新)