新型コロナウイルスの影響で、リモートワークの必要性が訴えられる中、ワーケーションに注目が集まっている。ネット環境を整備し、旅先の地方で働くスタイルで、移住促進につながることから、県は3年前から、希望する会社をバックアップ。また、和歌山市加太では住民独自のネットワークを駆使して力を入れ、市がモデル化し他地域への展開を構想している。

移住や会社移転へ発展期待〜加太は住民有志が受け入れ

 ワーケーションは、「働く」を意味するワークと、「休暇」のバケーションを合わせた造語。地方で旅行を楽しみながら、勤務時間帯には仕事をする新しい働き方として注目されている。

 和歌山県は2017年から全国の自治体に先駆け、ワーケーションをPR。ツアーのモデルを提案して首都圏の企業を招いており、特に多い白浜町は昨年までに104社が訪れた。これまで13社がサテライトオフィスを設け、1社が東京から本社を移転している。

 県観光振興課の藏光良さんは「ワーケーションが、サテライトオフィスの設置や会社の移転、移住へとつながるのが理想。コロナの影響があり今は積極的にPRできないが、収束後にチャンスがあると信じている」と願う。

 一方、住民が力を入れているのが和歌山市加太だ。同地区では加太地域活性化協議会、加太まちづくり会社、観光協会、住民有志らが独自にワーケーションや移住の受け入れを進める。

 昨冬には、大手コンサルティング会社の社員6人が、3泊4日でワーケーションするのをサポート。夏季のみ営業する喫茶店を貸し出し、Wi─Fiを設置して、働ける環境を整えた。参加者からは「自然が多く、リラックスでき、いい環境で働けた」と好評だった。

 問い合わせが入ると、ネットワークを生かし、町の案内や物件の紹介を行う。これまで8組に対応。移住希望者を案内した同協議会の幸前次朗さんは「加太は住民同士のつながりが強いのに加え、もともと商港の町なのでよそから来る人に慣れている。若い人に来てもらい、一緒に地域を盛り上げていけるとありがたい」と話す。また、昨年10月に大阪から夫婦で移住してきた和田山真央さんは「歩いているだけで声を掛けてくれ、住みやすそうだと感じたのが、移住の決め手になった。今後は僕たちがしてもらったように声を掛け合い、力になりたい」と望む。

 同市はこの動きを「加太モデル」として注目。市企画課の松井宏晃班長は「移住したい人に住みやすい環境を整備することが、空き家対策にもつながる」と期待する。市は今後、加太や和歌浦では漁業、山東で農業体験と地域の特性を生かしたワーケーションや移住体験ができるよう、拠点選びや空き家の整備、都市部への情報発信を図る考えだ。

 ワーケーションや移住に詳しい和歌山大学の佐久間康富准教授は「空港や大阪へアクセスしやすく、食べ物がおいしくて景観もいい和歌山はワーケーションに適している。その反面、移住してきた人が地域の人とコミュニケーションを取り、うまく生活していけるかとの心配もある。加太のように移住前に面談などし、互いに尊重し合えるか見極めるのが大事」と考えている。

写真=昨冬の加太。海を前にパソコンに向かう

(ニュース和歌山/2020年8月8日更新)