農業未経験だった両親が10年前に立ち上げた農園を守ろうと、岩出市の阪本健悟さん(41)が慣れない農作業に奮闘している。昨年11月、脳腫瘍(しゅよう)のため、父が余命宣告されたのがきっかけだ。阪本さんは「父だけでなく、母も体力が衰えていく。2人が作った農園を守り、支えていきます」と決意を込める。

塾経営する阪本健悟さん〜余命宣告受けた父の思い継ぎ

人気のかんきつ5種詰め合わせを手にする阪本さん

 会社を経営していた阪本さんの父は10年前、「老後は自然の中でマイペースに働きたい」と、和歌山市東部で母と共に農園をスタートさせた。農薬や肥料は最小限に留め、野菜や果物を育ててきた。

 特にはっさくは、苦味が少なく、甘みと酸味のバランスが程良いと人気。オンラインショップのメルカリに「雪だるまの産地直送フルーツ王国」として出店している。これまで1万3千件以上のコメントが寄せられ、評価は満点 の5つ星、リピーターも多い。

 しかし昨年11月、父が平均余命14ヵ月とされる脳腫瘍の一種、悪性神経膠腫(こうしゅ)と診断された。難しいと分かりながら仕事への復帰を目指してリハビリに励む父、突然のことに驚きつつも農園を守り、介護もする母の姿を見た阪本さんは、本業の塾経営のかたわら、2人の手伝いを始めた。

 購入者とのやりとりを担当する中、添えられたメッセージの温かさにふれた。「息子は大学生、娘は高校生。毎年はっさくを食べて大きくなりました」「今年〝も〟とってもおいしかったです」──。阪本さんは「両親の作った農園と育てた果物や野菜が、だれかの人生にかかわっていると知り、感動しました」。

 本業と両立するため、電動作業機具や軽トラックなどの購入資金を集めるクラウドファンディングを実施中。返礼品には自慢のかんきつ5種類や季節の野菜詰め合わせなどを用意する。阪本さんは「購入してくださった皆さんの期待にこたえるとともに、両親が丹精込めた野菜や果物を全国に届けたい」と目を輝かせる。

 クラウドファンディングは3月13日㊐まで。詳細は「キャンプファイヤー 雪だるま フルーツ」。

(ニュース和歌山/2022年3月5日更新)