ドタバタありつつ笑い届け

 紀(しるす)の会は現在、メンバーが14人。発足以来、のべ360ヵ所で、1370席(落語以外のイロモノ含む)を披露させていただいております。

 落語にはよくしゃべるキャラクターで、お松さんという女性が出てきます。「雀のお松」「雷のお松」とみんなから呼ばれているのですが、和歌の浦アートキューブで「かたをなみ寄席」をさせていただいた後、あるご婦人が「きょうはありがとう! こんなに笑ったの久しぶりやわ〜。私、普段は家に一人で居るから、しゃべることもないし、笑うこともないんよ~。こんなに涙流して笑ったの久しぶり! 近くであるときはまた教えてねー」と私の両手を握りしめ、立て板に水の如くしゃべるだけしゃべって帰って行かれました。

 そうか、今までは自分たちが落語を楽しんでいるだけだったのが、知らず知らずのうちに見に来てくれているお客様に大変喜んでもらえている…、こんなありがたいことはないです。素人の私たちが微力ですが、皆さまに笑いを届けている…。和歌山の文化の発展に少しでも協力できていると感じた瞬間でした。

 そんな紀の会。紆余曲折(うよきょくせつ)の10年でしたが、お越しいただいたお客様、周りの方々、もちろん会のメンバー、本当にいろんな方々に支えられた10年でした。今後もお客様が楽しめて、自分たちも楽しめて、皆が笑顔で会場を後にできる落語会を目指してまいりますので、これからもご指導、ご鞭撻(べんたつ)のほどよろしくお願いいたします。

 上方落語には「東の旅」という噺(はなし)がありまして、ボケの喜六とツッコミの清八がお伊勢参りをするのですが、道中はドタバタ劇そのもの。紀の会も喜六、清八のようにボチボチと楽しく、ドタバタもありながら進んで行きたいと思います。では、参りましょうか~、その道中の陽気なことぉ~。

(ニュース和歌山/2020年4月25日更新)