言葉の選び方を工夫する

 「やさしい日本語」の存在を知っていますか? 外国人をはじめ、日本語が十分でない方たちとコミュニケーションを取るために考え出されたものです。

 きっかけは1995年の阪神・淡路大震災。被災者の中には多くの外国人も含まれていました。日本人に比べ、外国人の死亡率は約2倍、負傷した人の割合は約2・4倍でした。この反省から、外国人への情報提供の方法が検証され、弘前大学の佐藤和之教授の研究室で考えられたものが「やさしい日本語」と呼ばれるようになったのです。

 例えば、「持参ください」は「持ってきてください」、「現金しか使えません」は「現金だけ使えます」など、分かりやすいように簡単な言葉に言い換えます。そもそも外国人と話すなら英語で…との声が聞こえてきそうですが、日本に住む外国人で英語ができる人は44%、日本語ができる人は62%とのデータがあり、実は英語より日本語ができる外国人の方が多いのです。

 外国人が使う様々な言語を日本人が学び、情報提供していけば良いとの意見もありますが、一体いくつの言語が必要なのかを考えると、時間も手間もかかり過ぎます。

 和歌山ではここ10年、街なかで外国人を見かけることが増えてきました。現在、和歌山県内には約7000人が住んでいます。その人たちと話をするのに、英語やその他の言語でなく、私たちが普段使う日本語をコミュニケーションの方法として活用できるのです。注意すべき点は外国人にも通じるよう、言葉の使い方に配慮することです。

 私は20年以上前から外国人に日本語を教える仕事、日本語教師をしています。外国人が日本語を理解し、使えるように取り組んできました。その中で、「私たち日本人は、日本語を学んだ外国人に分かる言葉を使って話せているのだろうか…」と疑問が湧いてきたのです。

 こうして2017年、やさしい日本語を広める勉強会をスタートさせました。

(ニュース和歌山/2021年1月9日更新)