毎年、桜の季節になると紀の川市の粉河にある河川敷へ出かける。高校時代、友人とよく訪れた花見スポットがお目当てだ▼やわらかな春風に誘われ、桜の下を歩くと、当時思いを寄せていた女性が桜のトンネルを笑顔で走ってくる姿が思い浮かび、みんなで弁当を広げ、バドミントンをして花見を楽しんだ記憶がよみがえる。桜並木を訪れたくなるのは、日々の忙しさから逃れ、思い出の中に心の安らぎを求めているからだ▼友人の多くは今、県外で働いている。インターネットの交流サイトで近況を見ると、子育てに励んだり、仕事に打ち込んだりと、様々な苦労や喜びを経験しながらそれぞれの道を歩んでいる▼この春、進学や就職で地元を離れた若者が多くいると思う。新天地では楽しいことだけでなく、辛いことや悲しいことも待ち受けている。落ち込んだ時、ほっとできる風景を思い出せば、きっと前を向いて進んでいけるはず。そんな故郷の風景を、それぞれの心に留めておいてほしいと願う。 (林)

(ニュース和歌山より。2017年4月1日更新)