近所の空き地に小さい子どもが集まる。「おわえ、やろら」。和歌山弁の「おわえ」、鬼ごっこだ。そこにだれかの妹か弟、年の離れた小さい子がまじっている。仲間はずれはかわいそうだから、一緒に遊ぶが、鬼にはしないと皆で取り決める▼1970年代初頭、私の住む地域ではそういう子を「たいのみ」と呼んだ。大阪では「ごまめ」、東京では「みそっこ」と呼んだらしい。各地に様々な呼称があるのは、どこでも同じことが行われていた証だ▼子どもたちだけで、そんなあり方を成り立たせていたのは今となっては驚きではないか。いざ「おわえ」が始まると、「たいのみ」も本気だ。時にはおにいちゃんたちもからかい混じりで脅してくる▼子どもから子どもへと伝えるのは、遊びのルールだけではない。強い者が弱い者を守りながら仲間となる、たちふるまいであり、距離感である。町で年齢を超えた小さい子の群れを見ないようになり随分になる。今夏、幾つかの若者の事件にその影響はなかったろうか。 (髙垣)

(ニュース和歌山2016年9月10日号掲載)