還暦を迎えた多くの人が自らの精神年齢を46歳と考えている。生命保険会社の調査結果の記事を日経新聞で目にした▼筆者は今夏で50歳。還暦はまだ先ながら記事に習い、自らの精神年齢を問うても正直分からない。30〜40代前半のころはよく自分は「大人」と呼べるのかと自問した。戦中戦後を生きた大人に比べ、何かが違う気がしていた▼しかし、「大人になるということは、その時に何が代償となったのかを自覚しながら自分で選んだことを引き受け、そのことをさらにまた前提として次の選択をしていく過程」(苅谷剛彦編『いまこの国で大人になるということ』)との一文にふれ、「じゃあ、もう大人だ」と思った▼昔のようにあるべき大人のモデルがはっきりなく、生きるうえでの選択肢が多様になった時代では、必然的にそうあらざるを得ないとの見方にも合点がいった▼それなりに人生の風雨にさらされ、ふと振り返り、前をみるしかないと歩み出す。ちょうどそれが40代半ばなのかもしれない。 (髙垣)