仕事が終わった足で2人の子を迎えに行き、スーパーへ寄る。鍋の材料をカゴに入れていると、娘から「きょうは手作りハンバーグって約束したやん」とダメ出しが入った▼「あした作るから…」となだめている様子を見ていた高齢の女性が「お母さん、頑張ってるなあ。鍋もおいしいで」と声をかけてくれた。たった数十秒のやりとりだったが、ヘトヘトだった体と心がふわっと軽くなった▼ある休日、3人の幼児を連れたお母さんを公園で見かけた。子どもを追いかける姿が疲れているようで、距離をとりつつ、「寝る時間はありますか?」と声をかけた。案の定、夜泣きが激しく、十分な睡眠が取れていないと言う。短い会話の後、少しだが彼女の表情が和らいだように感じた▼他人からの温かい気持ちに触れた時、〝自分のことも大事にしよう〟と普段なかなか出合えない余裕が顔を出す。何かと落ち着かないご時世だが、この町の色んな場所で、思い思われる瞬間が生まれることを願いつつ、師走を過ごしている。 (井本)

(ニュース和歌山/2020年12月12日更新)