まもなく衆院選が行われます。今の任期が10月21日まで。衆院選は実に4年ぶりとなります。そこで気になるのは投票率です。和歌山でも低下傾向です。

 投票率はなぜ下がるのでしょうか。様々な分析がありますが、ここでは①個人的側面、②条件的側面から考えてみます。①は個人の政治に対する認識や意識、考え方です。よく言われるのが「私が行っても変わらない」とのあきらめ感。あるいは「だれを選んでいいか分からない」でしょう。

 前者は、何か創(つく)る経験・変える体験の蓄積が必要だと思います。どのように当事者意識を育むのか。「正統的周辺参加」理論を応用できます。人は実際の場面に巻き込まれながら学習し、その主体性を育んでいくというものです。小さくてもいいので、社会的な場面で物事を決める・議論する機会に参加するのが大切です。地域の自治会やサークル、子ども時代の児童会・生徒会や子ども会、「こども議会」も重要な機会です。高校生や若者を投票立会人に登用するのもひとつです。

 後者は、小選挙区制では政策が中道に収斂(しゅうれん)する、A・ダウンズらの議論があります。候補者間で政策の違いが見えにくくなることです。とは言え、必ず政策の違いはあります。また、人格は異なるので、政策と共に、今後の4年間を託し得る「信頼」を見極める必要があるでしょう。

 ②ですが、近年、投票所の数が減って、投票行動自体が困難との状況が増えています。ここはネットや郵便投票などが待たれます。

 世の中には解が成り立つものがたくさんあります。白黒はっきりつけるのが難しいことも多いでしょう。スッキリしたい気持ちも分かりますが、政治ではそうはいきません。M・ウェーバーは政治を「情熱と判断力の両方を使いながら、堅い板に力をこめて、ゆっくりと穴を開けていく」ものと説きます。政治家が何に情熱を持っているのか。政治家にはその覚悟を、有権者はその経過を見届ける必要があります。

 選挙は振り返りの機会です。これからの話も大切ですが、これまでどういうことをしてきたのか。その振る舞いも含め、候補者を、総体としての政治全体を、そして自らの投票をチェックする機会なのです。

和歌山大学准教授 西川 一弘(第2土曜担当)

(ニュース和歌山/2021年9月11日更新)